▼子どもに『危ない』を教える
『火』や『刃物』を使わせるということ
皆さんは子どもに火や刃物を使わせるということについて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
おそらく多くの方が『危ない』というイメージをお持ちで、子どもに扱わせるべきではない、とお考えの方も多いことと思います。
『火』は熱いし、誤って触るとやけどをします。もちろん危険です。
言うまでもなく『刃物』も危険です。手や肌を傷つけ、時には自分だけでなく他人の事も傷つけることがあります。
多くの大人が、子どもにこの2つを扱わせるべきではない、と考えるのは当たり前のことですね。
私は、『大人の管理下の下で』という条件付きで、子ども達にこの2つに小さいころから慣れ親しんで欲しいと考えています。
その理由はよく言われている「実際に痛い・熱いという体験をすると、それ以上無茶なことをしなくなる」というものではありません。
もちろん、少々のケガはどんな事にも付きものなので、その要素もないわけではありませんが、火傷の痕が残ったり、完治できないほどのケガを負ったりしてまですることではないでしょう。
そんなことよりも大切なことがこの2つの経験から得ることが出来ます。
まず、『火』について考えてみましょう。
焚火をした経験はありますか?焚火のイメージは人それぞれでしょうが、私が言う焚火は、BBQコンロのようなものに着火剤や炭を使って火をつけるものではなく、枝を拾い集めてマッチやライターで火をつけるもののことです。
簡単に焚火の事を説明すると、まず最初は乾いた木の皮やカラカラに乾燥した杉の葉、開ききったススキの穂などを中心に置き、その周りに細い枝、中くらいの枝、太い枝の順に木を組み、中心の火付け材にマッチやライターで火をつけます。出来ればマッチを使用するのが良いでしょう。
火が付いて安定したら、ソーセージを焼いたりマシュマロを焼いて楽しむことが出来ますが、そのための準備は一筋縄ではいきません。
まず初期段階として、大人と共に焚火を楽しむことから初めてほしいと思います。
大人と共に材料を拾い集め、焚火の設営場所を探し、周りに燃えやすいものがないか、風は強すぎないか、バケツに非常時の水は用意してあるか、等の注意を払って楽しみます。
子ども達は火が好きです。これは大人も同じですが、ゆらゆら揺らめく炎、パチパチはぜる薪の音は癒し効果、作業効率アップ効果、集中力アップ効果などがあると言われています。
実際、焚火の画像と音を楽しむだけのアプリがあるくらいです。
子どもは、大人と共に焚火をする中で、自然とどんな危険があり、どんな楽しみがあるのかを覚えていきます。
大人と共に焚火をし慣れている子ども達は、徐々に大人とは違う自分たちだけの焚火を持ちたがります。
その時が、チャンスです!子ども達に焚火作りを任せてみましょう。
任せる、と言っても、設営場所は周りに燃えやすいものがないか、風向きを考えているか、バケツの水は用意しているか、そんなことを大人は確認する必要があります。
子ども達は自分の焚火を作るために材料を拾い集めます。
大人と一緒にやっていた時とは違い、そんなにすぐに大量の枝が集まるわけではありません。
枝なら何でもいいわけではなく、乾燥している枝を見極める必要もあります。
そうして集まった枝に火をつけるわけですが、ここはぜひマッチを移用していただきたいと思います。
昨今、小学校の理科の実験や校外学習の飯盒炊飯等でも、マッチを使用させず、チャッカマンでつけてしまう所があると聞いています。
それはもちろん安全に配慮したうえでのことでしょう。
しかし、マッチで火をつけるという行為には、様々な要素が入っています。
箱やマッチ棒の持ち方、箱の側面でこするときの力の入れ具合、上から斜め下へとすりおろす動作、付いた後自分の指の近くに炎があるという恐怖との闘い、棒を下に炎を上に向けるという持ち方、、、
様々な細かい動作の集大成でマッチに火をつけ、それを焚火の中心につけることが出来るのです。
焚火は難しくても、是非マッチでの火付けは親子でやってほしいです。
そして必ず「大人と一緒にやること」を約束してください。
焚火の話に戻りますが、自分たちで一生懸命材料を集めても
すぐに大きな炎の焚火ができるとは限りません。
集めた材料が足りなかったり、枝が湿っていたり、すぐに消えてしまうことも
そんな時、子ども達は自分の頭で考えます。どうすれば継続して燃え続ける
焚火が出来るのか?
自分たちがソーセージやマシュマロを焼くためなら、とにかく一生懸命に考えるのです。
刃物を使うことも同じです。
鉛筆を削る、焚火の時にソーセージを刺すために枝の先を削る、柿の皮をむいて食べる、料理の手伝いをする等など
多くの場面で刃物は役に立ちます。
元来刃物は、危ないものではなく、便利なものなのです。
どうやったらこの道具がより使いやすくなるのか、どうやったらもっと便利になるのか、そんなことを考える過程で刃物は活躍してきたことでしょう。
同じ木でも、ナイフで削りやすいものとそうでないものがあります。
削る方法、削る向きによっても全く違います。それを体験してほしいのです。
『火』と『刃物』どちらにも共通して言えることは、使うときに多くの工夫が必要で、自分の頭で考えて行動しないとならない、という点です。
人任せにしていたら何も出来ません。自分の要求を満たすために、自分で考えて行動する、こんな素晴らしい経験は他になかなかあるものではありません。
刃物が危険だと言われている背景に、10代の子どもによる刃物の殺傷事件があるかと思います。
友達を刺した、親を刺した、路上生活者の方を刺した、その他様々な事件があります。
そんなニュースを見聞きするたびに「子どもに刃物を持たせてはならない」という考え方が増えていくことでしょう。それは仕方のないことです。
しかし、小さいころから刃物の怖さだけでなく、便利さを知っている子どもはむやみやたらに刃物を振り回したり、脅しの道具に使うことはありません
小学4年生ごろに彫刻刀の授業がありますが、そこで生まれて初めて刃物を手にするお子さんも多いでしょう。
小さいころとは違い、力も強くなっているので大きなケガをしないとも限りません。
小さな時から本物に触れる、とても大切なことですね。
この2つの経験に共通して言えることは、
まず最初は必ず大人の指導の下行う、ということ、危険なことははっきりと教えてください。
そして、大人と一緒でないと出来ない遊びだと約束すること、これも大切です。
危ない、危ないと止めるのではなく、自分で考え自分で実行する体験をどんどん増やしていきましょう!
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